<英国自動車サイトNEW CARNET.co.ukでのアコードi-CDTiの評価記事>
http://www.newcarnet.co.uk/mag_latest_rtest.html?id=447&highlightws=Honda%20Accord


新しい隣人との会食に先立って、そのダンナさんは、奥さんがブランブレッドが好物だということをそれとなく言った。私は当然ブランブレッドを求めて出かけることになった。
あなたは健康食品店に行ったことがありますか? パチョウリの香りとモーツアルトで洗練された雰囲気のなか、物静かに話す亜麻色の女の子が付き添ってくれる。彼女らはブランブレッドを売っていた。彼女らは古いブランブレッドを売っていたのではなく、まさに本物を売っていたはずだ。
ところが、海老の前菜と一緒にそれを出した時に、そのダンナさんが以下のようなことを言った時、私がどれほどたまげたか想像して欲しい。「これは、家内の口に合わなかもしれません。普通のブランブレッドはありませんか?」 私は、別物を買ってきてしまったようだった!
五感がだまされるのは、これに限った話ではない。先日、私が、新型ホンダアコードi-CTDiで別の隣人を駅まで送っていった時もそうだった。彼は、この車がガソリン車と確信していたが、ディーゼル車だと聞いて、「そんなはずがない。何もエンジン音が聞こえないじゃないか!」と。
 ...いやはや、少しは聞こえるよ。でもエンジン音も振動も本当にごくわずかなのだ。

アイドリング時でさえ、ディーゼルエンジンに特徴的な爆発音は、このホンダユニットの場合はほとんど聞こえない。このことは、今迄最も洗練されていると評されていたプジョーとフィアットのエンジンですら、もはや“うるさい”部類に追いやってしまうものだ。これほどの静かさは、単に防音吸収材にエンジンが覆われているからではない。このエンジンの精緻なエンジニアリングによるものなのだ。広く知られているとおり、ホンダはエンジンデザインと製作で名を成した会社なのである。

騒音と振動と引き換えにパワーとトルクを獲得していた古いディーゼルエンジンに対し、ホンダの回答は、騒音と振動に妥協すること無く、パワーとトルクを手に入れたエンジンだった。ホンダは、このために行ったことは、以下のとおりである。
2つのステージの燃料噴射装置、いわゆる2次バランサーシャフト、高度な防音エンジンカバー、オフセットシリンダー、振り子エンジンマウントシステム、最適化された燃焼室における圧縮比の低レベル化

すばらしいエンジニアリングは、ボディーにも及んでいる。特にAピラー、いうに及ばずボンネット下。加えて、アコードi-CDTiのフロントサイドのガラスは若干厚めになっている。これは、エンジン音だけでなく、ロードノイズの低減効果も生んでいる。

キャビンが醸し出す快適さ。そして、Dセグメントにおけるベストカーの1台を操るドライビングの楽しさ。全てのセグメントを通じて、おそらくベストであろうエンジン。2000回転で320Nmのトルクをたたき出し、しかも1500回転でその80%のトルクに達してしまうのである。ホンダのエンジンは、もはやクラッチを必要としないのではないかと思えるほどである。必要なのはサードギアとスピードをコントロールするためのブレーキだけだと言いたくなるほどの車だ。

街から狭い田舎道に出ると、同一ギアで十分。4速5速は広い道路に出てからだ。アコードのトルクたっぷりのエンジンは、燃費を驚異的なものにしている。郊外の走行で、61.4マイル/ガロン(1マイル=1.6km、1ガロン=英国4.5L よって21.8km/L)。街乗りで42.2mpg(=15km/L)。両者合わせて、52.3mpg(=18.6km/L)であった。(中略)

最高速は130mph(=208km/h)で、0→100km/hまで9.4秒の加速力だ。140馬力のアコードi-CDTiは、154馬力の2Lエンジンのガソリン車と、全く同じ動力性能を持ったクルマだと言える。(中略)

どのグレードを選んでも、エンジンのトルクとスムーズさだけでなく、極めて身体にフィットするドライビングポジションとトップクラスのハンドリングを楽しむことができる。私は、初めてこの車を運転した時からNewアコードのファンになってしまったという事実を告白する。そして、アコードツアラーに試乗して、益々その思いを強くした。そして、このi-CDTiというちょっと舌をかみそうな名前のディーゼルモデルを走らせてみて、さらに確信したのである。

世の中には「悪い車」というのはそんなに無いと思う。よって、大部分の車は「いい車」なのである。しかし、私にとって「いい車」とは、単にドライバーの運転どおりに動く車ではない。ドラマをもって反応してくれる、言い換えれば、あらゆる局面で心を震わせてくれる官能的なクルマが、「いいクルマ」なのだ。アコードは、そんなクルマだ。先代までは単なる造りの信頼性だけで、決してそんな思いをさせてくれるクルマではなかったのだが。

Newアコードは全くもって変わった。あなたがディーゼルエンジンに対して持っているイメージを破るために。そして、あなたがハイパワーのガソリン車に対して持っているイメージを破るために。BMWやAudi、Mercedes-Benzのガソリン車に乗っているドライバーは、このアコードを買い換え時には選択していい。イメージではなく、少なくともそのクルマとしての性能を選ぶのであれば。

まだ読者諸君の中に疑いの目を持っているものがいるのであれば、ホンダトップの言葉を引用してしめくくりたいと思う。彼は、私が重要視する官能性について述べている。「運転する満足は、より大きな感動を得ることだ。ホンダは「運転する楽しみ」を追究する。なぜなら、それは顧客が求めるものだからだ。」 この会社は、しっかりと地に足がついていると言えよう。

★読んでいて、思わず心が熱くなる記事ですね。そう、アコードはそんなクルマなのです。私は、この記事を読みながら、別の雑誌(英国で最も権威あるAutoCar )で、「アコードの台頭は、欧州自動車メーカーにとっては、控えめに言って、少々手荒い朝のモーニングコールのようなもの。深刻に受け止めれば“新たな脅威”だ。」と表現されていたことを改めて思い出しました。