<英国自動車サイトNEW CARNET.co.ukでのアコードツアラー評価記事> http://www.newcarnet.co.uk/mag_latest_rtest.html?id=442&highlightws=Honda%20Accord 「なあ、君。こいつを履きたまえ。」隊長は、私の父に小さな茶色のシューズを渡しながら、そう言った。第2次世界大戦中のことである。父は、大隊長の専属ドライバーとして北アフリカ戦線に従軍していたが、それ以来、お偉いさんを乗せて、デリケートなペダルワークをするにはあまりに向いていない重いブーツを捨て、心地よい靴を履くようになったのである。 大隊は、同時に3トントラックから、「ハンバー・シューティング・ブレーク」という名のクルマに切り替えた。これは、初期の英国製ワゴンに特徴的だった木製の外装フレームを持つワゴンである。そして、平和な時代が訪れると、このシューティング・ブレークは、狩りや釣りに使われるようになった。今では、レンジ・ローバーのような車がこの役割を負う。ワゴンが、あらゆる目的をこなすマルチパーパスカーに変わって行くのは60年代70年代で、そして脚立も含めた作業道具を積むクルマになった。 この労働者イメージはなかなか拭いきれないものだった。ステーションワゴンを考える時、どうしても社会階層を思い浮かべてしまうものである。それがゆえに、メーカーはこのイメージの払拭に力を注ぎ、貧相なイメージからライフスタイルを楽しむクルマへの転換を図ろうとした。この努力は、ボルボV70の果てしない成功物語に繋がって行くのだった。 きっかけがどうであれ、努力は無駄ではなかった。今や、ほとんど全ての自尊心の高いメーカーは、ステーションワゴンを方向転換させ、装備を充実させて、生来の2ボックスデザインを薄めている。それどころか、パワートレーンに関しても、生まれ変わったかつてのシューティング・ブレーク達は、もはや従来の域をにはいない。ほとんどが、4ドアや5ドアのプレミアクラスのセダンとエンジンや最新のトランスミッションを共有しており、ハンドリングや乗り心地は、伝統的な荷物運搬車の持つイメージを払拭している。 最新のステーションワゴンの1つであり、ステーションワゴンの伝統的な良さを残す好例が、ホンダ アコード・ツアラーである。ここでは、2.4Sを取り上げる。絶賛を受けたセダンに続いて、販売開始されたこのツアラーは、4ドアセダンの良さをそのままに、さらに広大な荷室にアドバンテージがある。この広大な荷室は、「小さなトラック」と言っても過言ではないものだ。 2.4L i-VTECエンジンは190馬力でピークトルクは223Nmで、あらゆる面でホンダらしいクルマになっている。速く、極めてコントロール性に優れ、そしてライバル達を凌駕する乗り心地を持っている。ツアラーは、従来のステーションワゴンに対する先入観を覆し、2ボックスライフスタイルへの憧れを抱かせるような魅力を持っている。 ツアラーのデザイナー達は、エレガンスと使い勝手が相反するものではないことを見事に証明してみせた。Bピラーまでのデザインはセダンと同じであるが、Bピラーより後ろについては、アルファロメオ156スポーツワゴンや、レクサスIS300スポーツクロス(アルテッツア ジータ)などで特有なスポーツワゴンスタイルに対し、ホンダ流の解釈が加えられている。ツアラーのウインドウラインは、斜め上に延びていくボディー側のラインと斜め下に下がっていくルーフ側のラインに挟まれて、シャープなテーパーラインを描いている。この効果によって、荷室が特大でありながら、見かけ上は荷室がそれを感じさせないデザインとなっている。 単純にルーフラインを延ばし直角に切り落としたデザインは、もはや過去の悪例だ。ホンダによって、ステーションワゴンのデザインに最もうるさい評論家達も満足する新たなデザインが生み出されたと言える。 ホンダのデザイナーは、実にいい仕事をしたと言える。その一方で、500kg以上の積載重量、1700L の積載容量は、ステーションワゴンカテゴリーの中では、トップクラスだ。使い勝手もよい。フロアは低く、完全にフラットだ。ルーフラインの傾斜にも関わらず、荷室の高さはクラストップだ。タイヤハウスの張り出しはほとんどなく、テールゲートの開口部の広さは、カテゴリー最大の1つだ。フロア下には50Lの荷物入れが隠されている。そして、キラーアイテムは、パワーテールゲートだ。キーのボタン1つで開閉が可能。 たとえ、私が友人の引っ越しの手伝いをすると言い出しても、ホンダは全く驚かない。ワンモーションリアシートによって、アコードツアラーは、5ドアエグゼクティブカーから、しばし、古き時代の荷物運搬車に変身する。私は、重い荷物をたくさん詰め込んで田園地帯を疾走してみて、コンパクトに設計されたマルチリンク・リア・サスペンションが0.5tもの荷物をうまくいなすことができるか確かめてみた。 あなたもきっとそう感じるだろうが、この重量物の運搬が、全く気にならない。軽快なハンドリングは、家具や冷蔵庫、洗濯機、衣類乾燥機、食器洗い乾燥機の重量に全く負けない。テストがまだ足りないのかもしれないが、それでも言いたいことはわかってもらえるはずだ。トルクフルなエンジンの御陰で、筋肉疲労のかけらも見せない。 このことは、ホンダが好んで「ツアラー」と「スポーツ」を結びつけて宣伝しているので、全く驚かない。言葉どおりである。最高速度 時速138マイル(222km)、0-100km/hまでの加速所要時間は8.4秒。2.4Sアコードツアラーは、スポーツカー顔負けの性能を誇る。中には、高性能の証明書を欲するドライバーもいることを考慮して、2.4SにはVSAと呼ばれる装置を付けている。 ヴィークル・スタビリティ・アシストの略称であるVSAは、オペレーティング・コンポーネンツの組み合わせである。最もシンプルな形として、伝統的なトラクションコントロール装置(状況に応じたタイヤ回転とエンジン点火のコントロール)があり、それに加えて、センサーがアンダーステアとオーバーステアを検知して、必要に応じて内側か外側の車輪へのブレーキングを行うものである。これこそ、ステーションワゴンが必要とするものであり、このような装置が、ステーションワゴンが近年どれくらい進化したかを示すものなのである。単にスタイルや技術だけが急速に発達しただけでなく、ユーザーのニーズに応えるセンスも磨かれなくてはいけない。もはやステーションワゴンを販売する営業マンは、荷室の広さをアピールするだけの時代ではない。 私は、アコードセダン2.4Sをテストした時に、この車の持つ心地よさと真の運転する楽しさに感動した。そして私は、この評価をアコードツアラーに当てはめることに何のためらいもない。両車の室内の仕立ては、全く同じである。同様に、ドライバーを温かく迎え入れる雰囲気作りや、操縦性も同じである。6速ギアからフル=アジャストブル=シート&ステアリングまで、アコードツアラーは、人と機械の一体化において、スタンダードとなる車だ。他メーカーにとって、このクルマを研究することは非常に有益だ。 ボグゾール(英国オペル)NEWベクトラワゴンと同様に快適な車だと言える。これは、この日本車に対する賛辞と受け取ってほしい。 しかし、このクルマは、快適なだけにとどまらない。スポーツカーを運転する官能性と数々の高い機能に裏打ちされた合理性がプラスされている。フロント・サイドカーテンエアバッグからクルーズコントロール、パワーテールゲートまで、アコードツアラーは、そのエレガントなスタイルの中に、豪華さを併せ持っている。さらには、小さいけれどハッとするような細部へのきめ細かい作り込みも言及しなければいけない。たとえば、2.4Sのキーレスエントリーシステムやブラックフェイス電動ダイヤル、スライド可能なアームレスト。20,095ポンド(1ポンド=200 円 約400万円)に微笑むことができれば、もうあなたのものだ。 さらに2000ポンド(40万円)を出せれば、エグゼクティブモデルを手に入れることが出来る。これは、DVDナビや革シート、サンルーフ、6連CDオートチェンジャーを装備する。さらに1000ポンド出せれば、オートマを選べる。予算が厳しいオーナーに対しては、2.0 Lバージョンも用意されている。価格は、5速マニュアルで17,495ポンド(約350万円)だ。2004年にはディーゼルモデルもラインナップされる。 しかし、ベースモデルでもあまり差がない。2.0Lエンジンは10秒以下で時速100kmまで車体を加速させるし、装備は上級モデルとほとんど変わりない。標準装備に付け加えたいオプションとしては、スポーツサスペンション、ルーフレール、17インチアルミホイールだ。あとは、“心地よい靴”くらいか。 ★英国のステーションワゴン評価は、やはり国内のそれとは気合いの入り方が違いますね。 |
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