キャンプ&ドライブ日誌
(2)昔のキャンプ&ドライブ日誌
娘が1歳になったばかりの時、突如妻を襲った病気と長期入院によって、半年間の一家離散という悲惨な運命に直面します。退院後も妻の療養はずっと続きますが、その困難にもめげず、趣味のキャンプを通じて、幸せな家庭の絆を確認し、再び人生の目標に向かって走り出すまでを、笑いとペーソスで描いています。くーぺきゃんぱー家の90年代の記録です。
1)はじめてのキャンプ 【茨城県フォンテーヌの森】1994年8月
8月6日/7日は、私にとってはじめての本格的なオートキャンプの日となりました。
場所は、茨城県つくばのフォンテーヌの森キャンプ場です。実は、2年間待ちに待ったキャンプでした。ちょっぴり、これまでのことを振り返りながら、はじめての本格的オートキャンプをレポートしたいと思います。

<行きたくても行けない! ああ、あこがれのキャンプ>
キャンプ道具として、はじめてキャンピングガスのシングルバーナーとラプソディーランプ、それにコッヘルを買ったのが、ちょうど2年前のことです。家内と1歳2ヵ月の娘を連れて、千葉の養老渓谷にデイキャンプに出かけたのも束の間、スポーツ万能の家内が膠原病に倒れ、半年近く入院し、退院後も療養生活を続けるなかで、あこがれのキャンピングライフは、遠いまさに憧れだけのものになっていました。ただし、キャンプに行けない私は、その鬱屈した気持ちを紛らわすかのように、グッズ地獄にはまりこみ、ムーンライト5をダイエーで値切って購入したのを皮切りに、自作の机をはじめ、椅子、ベッド、タープ、クーラー、ジャグ、マット、シュラフ、バーベキューコンロと、この2年間、道具だけは、1人前になったのでした。また、去年からは、この
FCAMPを楽しく読ませていただくようになり、また時には発言もし、キャンプに対する知識も増えていったのでした。・・・・・しかし、キャンプに行けない.....うう、行きたいよー

<はじめてのオートキャンプへ>
家内と今は3歳になった娘は、私のお盆休みより一足早く実家のある福井へと、7月末日に帰っていった。ひさしぶりに独身に戻るこの10日間、週末の休みに、ついに長年の憧れのオートキャンプをすることにした。まずは、近場からと、前からチェックしていた、フォンテーヌの森へと予約を入れる。こんな直前では空いていないと思いきや、空いてるとのこと! なんたるラッキー! 最初はひとりでゆっくり読書でも、とも思ったが、まわりの喧騒のなか一人も寂しいなと思い直し、会社の同期の1人を誘ってみる。彼は喜んで、話に乗ってきた。彼は工場勤務、私は本社の営業勤務とはなればなれになっていたため、この2年ほどは会ってなかった。聞けば、長年の独身生活に別れを告げることにしたとのこと。そいつはめでてえ!よっしゃ、バーベキューでもつつきながら、このオレが結婚の段取りから夫婦生活まで、ばっちりアドバイスしてやろうじゃないか、と意気込んだわけでした。

<クーペでキャンプは詰め込みパズル>
出発の前日、集めに集めた道具をトランクに初めて詰めてみる。私の車は、カローラレビン(AE92型)、全くキャンプには不向きな車である。本当は、キャンプに行かなくても、家内が後部座席でゆったりと座るためにもエスティマエミーナかルシーダがぜひ欲しいのであるが、32歳の若輩者には、そうそう車を買い替えるゆとりはないのが悲しい。セダンキャンパーの皆さん、まさに詰め込み作業はパズルですねえ。銀マット2本は、結局トランクに入らず、後部座席に置くことになった。うーむ、いつか夢みる親子3人のキャンプに、やはりレビンは、ちょっときついかあ...!
当日、10時半に出発、近くのスーパーで氷と果物を買う。私の家のある千葉県**市から目的地のつくば市までは、常磐自動車道を通って、1時間しかかからなかった。途中、寿司屋によって、ゆっくりと昼食を済ませた。

<フォンテーヌの森>
フォンテーヌの森は、栗林のなかに作られたキャンプ場で、秋は栗拾いでも楽しめそうだった。受付は、コンビニも兼ねており、すこぶる便利そうである。トイレも水洗で、女の子も安心できそうだ。また、ログテラスも気分をいやおうなしに盛り上げてくれそうだ。
あぶらぜみやみんみんぜみのなき声のふりしきるなか、設営にはいる。ムーンライトテントは、2年間無事かびの生えることもなく、静かに眠りを覚ました。あっという間に完成。うわさどおりである。次はジャパーナのレタングラータープの出番だ。二人でやれば、思ったほど大変ではなく、30分もかかってないと思う。机・椅子をセットして、残りの荷物を並べてできあがり。サマーベッドに寝ころぶと、ああ、なんとも極楽極楽!おもわず、フッと眠りにつきそうだった。
4時からは、夕食の準備。この日のために去年・今年とオレンジページのアウトドアクッキングを買って勉強したのだったが、やはり、無理はせず、私の得意中の得意、カレー&サラダとした。さらに、バーベキュウーコンロでイカのゲソを焼いて、ワインをちびちび飲むことにした。キャンプでワインを飲むというのは、かの木村東吉先生から、オレンジページで学んだことである。
私はクーペキャンパーゆえ、大型のツーバーナーは使えない。シングルバーナーを2つ並べて、片方でカレー、もうひとつでごはんを炊いた。作っているところを娘に後で見せられるように、同期にビデオで撮影してもらった。猛暑のなか、汗がだらだら、上半身はとっくに裸になっている。だが不思議と蚊がいない。
食事を食べ終わり、またベッドに横になると、ふいにヒグラシのなき声が聞こえてきた。ああ、夏だなあ。ランタンに燈をともすと、同期の顔がほんのり赤く浮かんだ。日常とちょっと違う光の色。なんだかホッとするなあと思う。
シャワーを浴びたかったが、混んでいて、10時半以降になってしまうため、タオルを水にひたして体を拭いた。べとべと感が一気にとれ、すっきりした。

ワインを飲みながら、同期の結婚相手の話などいろいろする。あらためて、自分の結婚生活を振り返ると、確かに愛する嫁さんが病気になってしまったのは悲しいことであったが、夫婦仲は結婚丸5年たった今も新婚時代そのもの。ちょっと衝突しても、うまい具合に身を引くことを心得てるカミさんのお陰だなあと思う。うーん、早く家族そろってキャンプにいきたいものだ。

<真夏のキャンプ場は貧乏長屋?>
10時になり、眠くなる。ここ一週間、家のことを気にする必要がなかったため、毎日夜の12時近くまで、冷房の効いてない部屋で仕事をした疲れが、どっと出てきたようだった。テントの中にはいって横になる。しかし.....あつい!... 通気のいいと言われるムーンライトですら、この猛暑にはなすすべがないようだった。 しかも、近くのテントサイトでは、若い男女のグループが大いに盛り上がっている。 .....寝れぬ.....横になっていると、近くをとおる足音がびっくりするくらい近くに聞こえる。まさか、俺達のテントサイトからこっそりランタンやらバーナーやら盗みにきた輩の足音じゃないだろうな。イライライラ...同期は、すやすや眠っている。 そのうち、隣のテントの3歳くらいのボクチャンがエーンと泣きはじめた。お父さんに怒られたらしい。いつまでたっても泣きやまない。何時だ?と時計を見るともう0時半を回っている。いい加減にせい! ふと、この環境、昔の貧乏長屋の暮らしそのものじゃないか?と思った。暑く寝苦しい夜、蚊帳の中、隣近所の声はつつぬけ....そのうち、いつのまにか、まどろみの中に入っていった。

翌朝、6時に起きて、朝の支度を始める。同期はまだ寝ている。あれっ、バーベキュウコンロに残したゲソがないぞ? そのうち、同期も起きてきた。「昨日の夜中、トイレに起きたら、白いねこがうろうろしてたよ」 なるほど、ねこ君の仕業か! おいしい好物を偶然にも見つけたねこ君のその時の気持ちを思い浮かべると、なんだかおかしくなってしまった。
朝は、昨日のカレーの残り。撤収作業も終え、いよいよ帰る時がきた。キャンプ場では、特に何か遊んだわけではなかったが、設営作業のひとつひとつが、食事の準備のひとつひとつが新鮮で楽しかった。外で飲む酒もまた格別。私は、改めて、この時がくるのを待っていた2年間を思いだすのであった。