<国民宿舎に併設のキャンプ場のメリット>
成田ゆめ牧場でのキャンプを終えた翌々日のこと。いつものように、昼休み、家へ電話をいれる。
「あ、おれだけど、調子はどうかな? 飯は食ったか?」
すると、かみさんが、印旛沼湖畔にある国民宿舎「湖畔荘」の部屋が今週末空いていることがわかったので、泊まりに行こうという。そして、湖畔荘に併設されているオートキャンプ場も空いているから、私の両親を誘ってキャンプをやったらとのことだった。
先週末に父と娘と私の3人で成田ゆめ牧場にキャンプにでかけた時、私の母はちょうど九州から妹(私にとっては叔母)が上京していたので、キャンプに行けなかったのだった。すっかりキャンプが気に入った母は、かみさんと娘がかみさんの実家のある福井へ帰省してしまうので、次のキャンプが9月になってしまうことを知り、がっかりしていた。母は俳句が趣味だが、キャンプに行って孫と自然の中でたわむれていると、いい句ができるとのことだった。
そんな母の気持ちをくんで、かみさんが、湖畔荘に電話をいれてみたのだった。2週間連続のキャンプだし、しかも湖畔荘で泊まり掛けのキャンプをした翌日は、かみさんと娘は福井へ帰省、私はFCAMP湾岸オフ参加とかなり強行スケジュールになってしまう。少し心配だったが、前から行ってみたかったキャンプ場だし、かみさんも旅館なら平気というので、思い切って行くことにした。
印旛沼は、千葉県北西部に位置する湖だ。鯉や鮒の釣りで有名なところであり、また、周囲には鰻のかば焼きを食べさせる食堂が何軒もある。水田があたり一面に広がり、のどかなところである。また、国立歴史民俗博物館という、大きくかつ奇麗でしかも面白い博物館も付近にあり、小学生〜大人まで楽しめる。
湖畔荘は、そんな印旛沼の湖畔にたつ国民宿舎だ。前述のとおり、オートキャンプ場が併設されている。かみさんが病気療養中で無理の効かぬ身なので、このように宿と一緒になったキャンプ場は、とてもありがたい。かみさんとカゼが治ったばかりの娘、そして、やっぱりクーラーの効いた部屋で眠りたいという母は、国民宿舎のほうに泊まり、私と父がオートキャンプ場に泊まることにした。
<方向音痴>
7月28日は、朝から快晴だった。そして、ものすごい猛暑だ。車を洗い、トランクに荷物を積み込んでいる最中に、娘が昼寝を始めてしまったので、出発はだいぶ遅れ、午後2時になってしまった。
途中、ジョイフル本田八千代店に寄って、前から欲しかったキャンピングガスのハイパワーランプという大光量ランタン(180W)を買った。コールマンのパワーハウス2マントルにするかキャンガスのハイパワーランプにするか迷ったけれど、ガス式の方が小さく運べるので、結局キャンガスにした。値段も5980円とまあまあだ。
国道16号を曲がって、佐倉市のほうへ向かう。しばらくして印旛沼が見えてきたけれど、湖畔荘らしき看板が見えない。
「ほんとにこっちの道か?」
「わかんなくなった。」
「なに! いっつも人のこと方向音痴などといって、人のこといえないな!」
もう4時近くなってしまったので、ついついナビゲーション役のかみさんに当たりたくなってしまう。こうやってキャンプに来れたのもかみさんあってのことだったのだが、あせっていると、ダメだな〜。 ナビゲーションシステムがあればなあ、なんて思うけど、機能の割に値段が高すぎるし.... まあ、我が家は、これからもこんな調子で道に迷うしかないか。
4時ちょっと回って、ようやく到着。両親は、かなり前に到着していて、ロビーで休んでいた。
すぐにおやじと設営にかかる。金曜日なので、オートキャンプ場は、我が家のほかには7家族ほど来ているだけだった。
<夕涼み>
2人なので、ほんとは1サイトでいいのだが、ふたりとも自分のテントで寝たいので、2サイトに分かれて設営する。テント、タープを張り、キャンバスチェアにどっかり腰をおろす。 すると、湖から涼しいそよ風が....
「やっぱり、水辺の風はなんとも気持ちいいね。ここで風鈴でもあったら、もう言うことなしだね。」
「ほんとだ。ちょうど、ここは木陰になっているし、猛暑を感じないな。なかなか気に入った!」
夏を彩るセミしぐれも一段と大きくなってきた。
夕食は、カレーだ。いつもは、「おなかすいた〜」とうるさい娘も、今日は旅館のほうで、お母さん達とお食事。いつもと違って、ちょっと拍子抜けしたような感じだな。 父とふたりで、ビールで乾杯する。カレーはニンニクを相当効かせたので、猛暑のなかでは、きわめてウマイ!
すこし薄暗くなってきたので、早速、買ったばかりのハイパワーランプをつけてみる。ホヤに白い帯がつているので、コールマンのランタンに比べて、まぶしくない。それでいて、明るさは十分で、サイト全体が照らされた。やはり、明るいサイトはいいもんだな。
おやじは、さっきからサウスフィールドのコットに寝そべっている。ウトウトしているようだ。
「このベッドは、ナイロンの布のテンションが何とも言えず、いい寝心地だね。こりゃ、ぜひ1つ買おう。」
「まあ、5000円きっていたら買いだね。去年アルペンでは、3980円まで値下げしたよ。残念ながら、今年はラインナップから外されてしまったみたいだけど。」
「しかし、買うと、お母さんがすぐ占領してしまうからなあ.... 困ったもんだ。」
「ハハハ.... それは言える。」
そのうち、かみさん、母と一緒に、娘がゆかたを来てやってきた。手には、花火の袋が。 一応、管理人さんに確認すると、OKとのこと。 父母と娘が、花火を楽しんでいる間、私はおやじのために、エアーマットを必死で膨らませた。アルペンで買ったダブルアクションポンプを相手に、10分間上下運動を繰り返すと、もう全身汗だくだった。この時ほど、キャンプ場にきて入れる風呂のありがたみを感じたことはなかった。国民宿舎の風呂は広く、心身ともにさっぱりした。
花火が終わると、娘たちは宿に戻った。おやじも、眠くなって自分のテントに入った。 私は、コットに寝ころび、ランタンの下で、本を開いた。
「きけ、わだつみの声」 10年前、買って虫食い読みをしたままほおってあった本を何となく読む気になったのは、今年が終戦50周年だからだった。
ほどなく、私も、疲れがでてきたのか、缶ビールの酔が回ってきたのか、眠くなってテントの中にもぐりこんだ。広いテントの中で、ただひとり、思いきり手足を伸ばしてぐっすり眠った。
<湖畔のそよ風>
翌朝、朝食を済ませ、タープとテーブル、椅子を残して、全て撤収が終了した。ふつうなら、すぐ帰ってしまうところだけど、前日は慌ただしかったので、タープの下で、さわやかな朝の湖畔の風を楽しむことにした。冷えたみつまめやパイナップル、ももの缶詰を開ける。 やはり自然の中で、自然を感じながら食べるデザートは、格別だ。
名残惜しさを残しつつ、キャンプ場を後にする。かみさんが、帰りの車のなかで胸を張った。「なおちゃんの企画は、どうだったかな!」
信号待ちの私が、「ウ〜ム、良かったゾ〜!」 と言いながら、チューのまねをすると、かみさんは、「イヤヤ〜!」とのけぞった。
全く、マンガみたいな夫婦である。
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