キャンプ&ドライブ日誌
(2)昔のキャンプ&ドライブ日誌
7)料理他強化合宿 【福井県織田町悠久ロマンの杜】1996年5月
<コテージでのキャンプ>
GWといえば、結婚してからずっと、かみさんの実家のある福井にやってきて、おいしいお魚を食べたり、温泉につかったりというのが常でした。千葉の新興住宅地に育った私にとっては、市街地から車で1時間もしないところに、山々があり、温泉が安くはいれ、また食べ物もとてもおいしいこの地は、第2の故郷のようになってしまいました。そして、前から、いつかここでキャンプをしたいと思っていたのです。
しかし、車にキャンプ道具を満載して千葉からやってくるには、福井はあまりにも遠すぎます。そこで、今回、ログコテージを借りて2泊3日のキャンプをしようということになりました。コテージであれば、ほとんどの道具は設置されていますので、キャンプ道具を運べない旅行者にとっては、とてもありがたい存在です。一応、シングルバーナーとランタン、コッヘルだけを衣類と一緒に段ボール箱に詰めて、かみさんの実家に送りました。

<今回のテーマは料理>
今回のキャンプのテーマは、”料理”にあります。この背景を物語るのが、前日の準備段階でのかみさんとそのお母さんの会話です。

「明日からキャンプね。楽しみねえ。」とお母さん。
「この人は、キャンプといったらカレーばかりなの。去年初めてカレー以外にパエリアを作った時も、私がつきっきりで指導したのよ。それなのに、自分で作ったと得意気だし。」とかみさん。
「あら、かわいいダンナさんじゃない。」
「私も、雑誌に出てくるようなおいしそうな料理食べてみたいわ。 ね、真のキャンパーだったら、お料理も上手じゃなきゃ!」

このやりとりに大いにプライドを傷つけられた私は、「よし! 今回は、腕によりをかけて、世界の料理を食べさせてあげましょう。お楽しみに!」と豪語することになったのです。そして、紙切れにメニューを作り、かみさんとお母さんに渡しました。
”イタリア風帆立貝のサルサソースソテー&スパゲティーペペロンチーノ””スペイン風パエリア””スイス風チーズフォンジュ””和食 牛のたたき””アメリカ南部風バーベキューサンドイッチ” etc....

「あら、おいしそうね。私も夕食だけいただきに伺おうかしら?」とお母さんもムコさんの料理と聞いて、興味津々です。かみさんもニヤニヤしてます。

「ええ、どうぞ! 何やら創造意欲がわいてきましたよ。ハッハッハー!」 もう、引くに引けない。(^^;) となると、頼りは、料理の本だけです。私は、オレンジページ増刊「海山川でクッキング」を必死になって予習しはじめました。

<ほや、GWの平日やでサービスしますんで、ジャイアントコースター乗りね、乗りね!>
当日は、あいにくの曇天です。かみさんの実家のビスタにキャンステをセロテープで貼り(後ではがしやすいように)、北陸地方のFCAMPERとの遭遇に備えます。「ここじゃオレも、”くーぺきゃんぱー”じゃなくて”せだんきゃんぱー”だな。」なんてくだらないこと考えながら、トランク一杯に食材他を詰め込み、昼前に出発です。目指すは、「悠久ロマンの杜コテージ村」です。福井市街地から車で1時間ほどのところです。

到着した所は、山奥の雰囲気が漂っていました。途中、集落がポツンポツンとあった以外は、杉や広葉樹の山々に囲まれています。
受付に行くと、「本日定休日」の札が下がっています。あれ、おかしいな? それでも、しばらく待っていると、スーパーカブに乗ったおじさんがやってきました。

「すんません。すんません。今日は、普通は定休日なんだけんど、GW中やで、お客さんが来なさるっちゅうんで、受付開始時間に合わせてやってきたんです。結構待たれましたけ?」
「いや、今来たばかりなんです。ちょっとびっくりしましたけど。」

さて、手続きをしようとすると、名前がありません。どうも役場で台帳への転記を忘れたようでした。

「すんません。でも、今日は、お客さん以外は1家族だけやで、空いてよかった。ほや! この先にジャイアントコースターっちゅうのがあるで、お乗りにならんか? 本日一応定休日やで、サービスでただでいいですよ。乗りね、乗りね。」

お言葉に甘えて、コテージに荷物を置き、簡単にパンで昼食を済ませた後、ジャイアントコースターに乗りに行った。ジャイアントコースターというのは、山の斜面にコンクリートの溝がくねくねに掘ってあって、そこを1人乗りのローラー付きソリで滑り降りるものです。これがスピード感たっぷりでおもしろく、2回やらせてもらいました。

<1番勝負 地中海料理>
さて、コテージに帰って、早速夕食の準備です。コテージは、1階と2階にそれぞれテラスのついた、丸太のログハウスで、新しくとても立派なものです。風呂、水洗トイレ、冷蔵庫、テレビ、挙げ句の果ては、電子レンジまでありました。 キャンプをするぞと思って来たのですが、これではキャンプとは言えないなあ。(^^;)
さあ、1番勝負の始まり始まり。メニューは、”イタリア風帆立貝のサルサソースソテー””スペイン風パエリア” とすることにしました。台所のコンロは1口だけなので、ウッドテラスにシングルバーナーを置いて、2ケ所で調理開始です。
まず、パエリアからです。にんにく、玉葱を炒めた後、魚貝類を炒め、さらにトマトやコンソメを加えた後は、ウッドテラスのバーナーでぐつぐつ煮込みます。その間に台所でサルサソースの準備をします。そして、台所とウッドテラスを行ったり来たりしながら、ごちそうは着々と作られていくのでした。

「おとうさん、なんか焦げ臭いよ!」4歳の娘が突然言いだしました。
ウッドテラスに慌てていくと、火がちょっと強すぎたか、パエリアのお米が焦げ付き始めている!! お〜!ヤバイヤバイ!!
その時、突然、娘が歌を歌い始めた。
「しっぱい、しっぱい、しっぱいぱ〜いのパイパイ。こんなはずじゃあ、なかったのに....」
ねえ、みほちゃん、その歌どこで覚えたの?

まあ、何とか、今夜の”地中海料理”は完成しました。みんなでカンパイです。パエリアは、お焦げがちょっと香ばしく、またごはんをよく噛むと中心部に歯ごたえを感じるという出来栄えでした。(^^;)

<さびしい山奥の夜>
お母さんは、かみさんの妹と来るとのことでしたが、山奥なので暗くて車の運転が危険と判断したのでしょう。来ませんでした。
夕闇があたりに迫り、私はランタンに燈を灯し、それを持って、娘と散歩に出ました。今日は、平日のため、我家以外は、カップルが1組泊まるだけです。
「ほーほけきょ」「きー、きー」 山の斜面の森からは、いろいろな鳥のなき声が響いてきます。夕闇がまた一歩、また一歩と近づいてきました。肌寒い風が急に吹いてきます。鳥のなき声もいつしか山の奥へと消えていきました。人里離れたという言葉がぴったりの寂しさです。
「お父さん、帰ろう。」 私達は急に怖くなってきて、急いでコテージへ戻りました。

<2番勝負 アメリカ風ブレックファスト?>
翌日の朝は、”アメリカ風オニオンスープ”です。まあアメリカ風というのはこじつけで、玉葱のスープにパンととろけたチーズがはいっているものです。

起きてきたかみさんに、「さあ、召し上がれ。」と出すと、「何これ?」
そうです。パンをいれすぎたため、パンが全て水分を吸い取ってしまい、何だかゲロみたいなものがお皿にはいっていたのでした。
食べてみると、ちょうどスキヤキの”おふ”を食べるような舌触りです。娘は、一口食べただけで、ごちそう様をしました。私も含め家族全員が、モンカフェやジュースで口直しをしたのは、言うまでもありません。(^^;)

11時ちょっと手前に、かみさんのお母さん、妹、そしておばあちゃんがやってきました。
「おいしい料理食べてるの?」お母さんが笑いながら聞いてきます。
昨日の料理の残りを出すと、おばあちゃんはパクパク食べ始めました。
「これ、ダンナさんが作ったんか。まあ、なんてまめなんでございましょ。うん、なかなかおいしいでございますよ。」
「そうですかあ? いやあ、そういっていただけると嬉しいですね。」

<3番勝負 スイス料理と日本料理のコラボレーション>
ちょっぴり気をよくして、昼ごはんのメニューに取り掛かりました。今度は、”スイス風チーズフォンジュ””和風牛のたたき”です。本当は、手抜きをしようと、チーズフォンジュの素を探したのですが、売ってない。仕方なく、白ワインと玉葱、チーズ、生クリームで自家製フォンジュを作ることになりました。
チーズがとろけて出来上がり。テーブルにシングルバーナーと針金で出来た鍋安定台をセッティングします。今度は、我ながらいい出来栄え。衆目が見守る中、真のキャンパーとしての面目を保ったのでした。

2日目は、雨です。お母さん達が帰った後は、コテージの中で勉強していました。かみさんがフランス語、私が英語。今年は、それぞれ仏検3級突破、TOEIC 800点突破という目標があるので、まあ張り切っているのです。何やら”合宿”のような雰囲気になってきました。
雨が夕方には止み、私がウッドテラスの丸太の柵の上をバランスを取りながら歩いてみせると、娘も大喜びでまねしはじめました。「お父さんって、すごいね〜」よく本屋などに行くと、アウトドアで父親が子供にすごいところを見せるためのマニュアルのような 物を見かけることがありますが、案外こんな単純なことで子供は感心するのかもしれません。

<4番勝負 ついに耐えきれず....>
夕食は、”イタリー風スパゲティーペペロンチーノ””アメリカ南部風バーベキューサンド”のはずでした。 しかし、なんとスパゲティーを忘れたのに気がつき、緊張の糸が切れました。結局”そうめん””ただの焼き肉”となりました。(^^;)

翌日、帰り仕度も終わり、かみさんに聞きました。
「今回の世界の料理は、どうだったかな? 何点をつけるかな?」
「65点」
「なにい! そりゃ、不合格ってことじゃないか! こらあ!」

何はともあれ、”料理&語学 強化合宿”は無事終了し、私達一家は越前海岸の風景を楽しみ、途中温泉にはいって帰途についたのでした。